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2026.05.11

㈱あさひ合同会計 代表取締役社長 藤原 耕司
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家死亡事件を巡り、今年3月下旬、2審である大阪高等裁判所も元妻に対して無罪判決を言い渡した。その後、大阪高等検察庁が上告し、執筆時点で元妻の無罪は確定していないが、本件は約13億円ともされる遺産の帰属を巡る相続問題としても注目され、税理士の立場から整理してみたい。
1.刑事判決の影響~相続権の有無~
民法上、被相続人を故意に死亡させた者は「相続欠格」となり相続権を失うが、これを整理すると下記の通り(本件、本来の相続人は妻と兄弟姉妹とされる)。
①元妻が無罪となった場合(現状)
通常通り、元妻と兄弟姉妹が相続人となる
②元妻が有罪となった場合
元妻は「相続欠格」として相続人から排除され、相続人は兄弟姉妹のみとなる
2.民法の影響~遺言の有効性~
本件では、別の論点として「全財産を田辺市に寄付する」とする自筆遺言の有効性を巡っても争われている。これまで1審・2審、いずれも有効と判断され、現在は最高裁判所で審理中であるが、これを整理すると下記の通り。
①遺言が有効の場合(現状)
・田辺市市 :全財産を取得(ただし、元妻による遺留分侵害額請求が予想される)
・元妻市っ支:田辺市に対する遺留分(2分の1)請求により、遺産の取得が可能
・兄弟姉妹 :遺産の取得なし(遺留分はない)
②遺言が無効の場合
相続人間で遺産分割協議をする※ことになるが、その際の法定相続割合は下記の通り。※田辺市の財産取得はなし
・元妻市っ支:4分の3
・兄弟姉妹 :4分の1
3.相続税法の取り扱い~配偶者の税額軽減~
刑事判決で元妻の無罪が確定した場合、元妻は、遺言の有効有無に限らず財産を取得することができるが、その際、配偶者の税額軽減の適用により、相続税はゼロとなる可能性がある。
なお、元妻と表記しているのは、資産家が亡くなった後に、死後離婚しているからであるが、相続時点では妻であったため、制度上、配偶者の税額軽減の対象となる。
本件は、刑事・民法・税務が交錯する複雑な事例である。こうした案件に関与した場合、専門家としての経験値は上がるが、その背景にある人間関係の重さを想像すると、やはりニュースの中だけで十分かなぁとも思う。