相続があった際の自社株式の評価額については、所定の計算方法が定められています。
ただし、M&Aで成立する価額とは大きくかい離することがあり、今回は、M&Aの交 渉中に株式所有者が亡くなり、その相続税評価額について争われた事例を紹介します。
- 取引の概要
・会社株式の大半を所有していた会社代表者が、M&Aによる他社への会社譲渡を検討
・会社代表者が中心となり、会社株式の売買を前提にした基本合意書を取り交わす
・その後、会社代表者が亡くなり、さらにその約1か月後にM&Aが成立
(参考:時系列)

- 争いの内容
納税者が所定の評価方法に従い、1株8,186円で相続税申告をしたところ、課税庁(税務署)から、M&Aが予定されていることを反映した計算による1株80,373円とする処分を受け、その価額を巡り裁判で争われました(東京地裁、東京高裁)。
最終的には、納税者の主張である1株8,186円が認められています(確定)。
(参考:各種価額)

- 裁判所の判断(主なポイント)
・会社代表者の生前に交わされた基本合意については、法的な拘束力はない※
※通常は基本合意を取り交わした後、さらに会社の財務等の内容確認を経て、詳細な条件を調整し、実行有無及び取引価額が決まる流れ
・会社代表者やその家族において、租税回避の目的は認められなかった
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