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『パワースポット』
11月ともなると暦の上では初冬となり、年末を意識した仕事も増えてくる。新しい手帳を購入し、年末年始までの予定を組む。初冬とはいえ暖かい日が多いので、窓を開け放して普段出来ないところの大掃除をしたり、ベランダの花を冬仕様のものに植え替えるのもこの時期だ。
ベランダは私のパワースポットだ。今のマンションに住むようになって早いもので10年が経つが、ベランダからは真夏の花火大会が真正面に見え、春は旭川の桜並木が見おろせるのが気に入って住むことを決めた。
早速、憧れていたベランダガーデニングを始めた。春夏はサフィニアやイソトマにハーブ、秋冬はパンジーやガーデンシクラメンといった花を中心に色とりどりの「ちょこっとガーデニング」を楽しんでいる。野菜や難しそうな花もトライしてみたが、自分と相性がよくて何より育てやすいものに最近は落ち着いてきた。
休日には、咲き終わった花ガラをとったり、助長した茎を切り戻したりと、それなりに手を入れる。肥料も少なすぎると花芽の付きが良くないし、たくさんの花を咲かせようと欲張って肥料をやりすぎると害虫が大繁殖して大変な目にあったこともある。加減がなかなか難しい。ハーブの土には石灰を少し混ぜてアルカリ性にすることは姉から教わった。あれこれと教わりながらの土いじりは子供時代に戻ったような気がして楽しいものだ。それに、こちらが手を入れれば入れるほど、期待に応えて花を咲かせてくれる。咲いたばかりの花を見るとそれだけで愛おしくなってくる。そのうち、おちおち泊まりの旅行には行けなくなってしまった。
なかでも一番のお気に入りは朝だ。前の晩に水遣りをしていれば、朝はもう必要がないのかもしれないが、軽く水をかけることで土埃が洗い流せて清々しくなるし、葉に溜まった水滴が朝日に光ってとてもきれいな光景になる。ああ幸せだなあと思う。
こうして私の手作りパワースポットが出来上がった。どこかに出かけることももちろん大好きだが、私にとっての身近で一番のパワースポットはベランダだ。いい気がみなぎっていると、勝手に信じている。なんと贅沢なことか。
宇野千代さんは私の好きな作家の一人だが、「日々生きていれば、煩わしいことや心が波立つことと無縁ではいられない。その中で幸福を知るのも才能のうち」だと言っていた。何か特別に楽しいことがあったから幸せ、なのではなくて、自分から見つけること。それも一見どうしようもないことにも受け止め方を変えて、意味を見つけ出すことができること。これが大切なことではないかと思う。
今年も精を出し、冬仕様の花に植え替えて、ちょこっとの「幸せだなあ」をまた創り出そう。
平成21年11月
今田泉美
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