日常の生活で何が大切かと言って、心の落ち着きほど大切なものはない。心が落ち着いてさえいれば、後は大した問題はない。良い暮らしをするためのそれは出発点である。
心が落ち着きを失うとき、例えば、身の置き所のないような肉体的な苦痛や不快を感じる、また 上擦ってしまい不安感恐怖にさいなまれる。これ程つらいことはない。 心の落ち着きをいつでも確保できるその方法を体得する位重要な ことはない。
「心が落ち着いている、心が落ち着いている、と繰り返し唱える。
呼吸を整える。深く静かな呼吸をする。
息を数える。一、二、三・・・・・三十まで。
光を感じるように努める。冬の朝の赤みのある陽射し。
風の音を聴く。身を切るように冷たい空気だが風はなく梢は動かない。
鳥の声を探す。季節の移ろいをたどってみる。」
そうしているうちに心がどっしりとして来る。心が清透になる。心の静謐さほど、貴いものはない。反対に、心に怖れ、おののき不安があること程、いまいましいことはない。
何物に対する時も心落ち着けて対したい。
神社へ参拝する。今まで以上に心を込めてお祈りをしよう。
一枚の絵を鑑賞する。絵の前で長い時間立ち尽くす。
新聞を読む。斜め読みでなく丁寧に読もう。
粗雑にはしない。私という軸を決して動かさない。
仕事をする時も、人と会う時も、その覚悟を忘れないで、慌てず、 上擦らず、一呼吸置きながら、決して心の落ち着きを失わない ように、習練しなければならない。
居間のソファの定位置で、暇さえあれば庭の花水木の木を眺める。夏の深い緑の葉が次第に色づき、やがて一枚一枚と落葉し、裸木となり、又、芽が膨らんでくる。飽きることなく私は眺める。ベッドに横座りして、軽い雑誌を広げたり、放心する。ベッドから西の空が見える。夕焼けを楽しめる。
そこに座れば心の落ち着く場所を持っている。又、愛読書があって、その本さえ読めば落ち着ける。好きな音楽があって、その音楽を聴けば心が和む。心落ち着くものがいくつかある。それは幸せなことである。しかし、もっと望ましい幸せがある。どこに居ても、全ての場所が居心地が良く、心落ち着く。全ての所、全ての時、世界と調和していられる。それこそが最大の幸せである。
奥山ユ |